要点
- 簿外債務: アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、メタ、オラクルの簿外債務は、4年間で約8倍に膨らみ、1兆6500億ドルに達した。
- 現金と投資の不均衡: 2025年から2027年にかけて、5社のハイパースケーラーの設備投資は5340億ドル増加する一方、営業キャッシュフローの増加はわずか3400億ドルにとどまる見通しである。
- 市場の反応: オラクルの株価は年初来36%下落し、オラクルとエヌビディアのクレジット・デフォルト・スワップのスプレッドは拡大している。
簿外債務が公表債務を上回る
2026年7月に発表された日本経済新聞の分析によると、米国大手テクノロジー企業5社の簿外債務は1兆6500億ドルに達し、各社が貸借対照表に計上する債務額を上回った。4年間で約8倍という増加幅は、データセンター、GPU、サーバーに関する複数年契約に起因する。会計規則上、これらの契約はインフラが稼働するまで帳簿に計上されない仕組みとなっている。

メタは約4200億ドルの簿外債務を抱え、5社の中で最大となっている。オラクルではこうした契約が30倍以上に膨らんでおり、OpenAIと共同で進めるスターゲート計画が背景にある。これらの金額は正式には開示されているものの、SECへの提出書類の脚注に記載されるにとどまり、大半の投資家が目を通さない部分に埋もれている。
キャッシュフローが設備投資に追いつかない
ロイターの分析はこの不均衡を数値化している。2025年から2027年にかけて、5社のハイパースケーラーの設備投資は約5340億ドル増加する見込みである一方、営業キャッシュフローの増加はわずか3400億ドルにとどまる。追加で生み出される1ドルに対し、各社は1.57ドルを投資している計算になる。
アマゾンではすでに顕著な落ち込みが見られる。フリーキャッシュフローは2026年第1四半期に12億ドルまで低下し、前年同期の約260億ドルから大幅に減少した。最も深刻なのはオラクルで、2026会計年度の設備投資は営業キャッシュフローの174%に達し、4年前の47%から急上昇、フリーキャッシュフローはマイナスに転じている。マイクロソフトの第2四半期(会計年度)の設備投資は375億ドルで、営業キャッシュフロー358億ドルを上回った。

アナリストの見方
アムンディの最高投資責任者バリー・グラビン氏は、この動きを19世紀のゴールドラッシュになぞらえる。インフラを提供する側が価値を積み上げる一方、その拡大を支える資金提供者は自らの財務内容を膨らむリスクにさらしているという構図である。モルガン・スタンレーは2026年に8210億ドル、2027年には1兆2670億ドルの投資規模を見込んでおり、こうした数字がこのモデルの持続可能性をめぐる議論を後押ししている。
株式市場の楽観と債券市場の慎重姿勢
ウォール街では、AIの将来的な収益化に賭ける形で、ハイパースケーラー各社の株式に対する買い推奨が依然として大勢を占めている。一方、信用市場では異なるシグナルが見られる。オラクルとエヌビディアのクレジット・デフォルト・スワップのスプレッドは拡大し、アルファベットが発行した100年債は発行価格から約7%下落した。JPモルガンは今後数年間で業界全体として約1兆4000億ドルの資金調達が必要になると試算する一方、国際決済銀行(BIS)はドットコムバブルに匹敵するリスクの存在を指摘している。

今後18〜36カ月が焦点
従来「アセットライト」とされてきたテクノロジー大手のビジネスモデルは、これまでにない規模で物理インフラに資本を固定する「アセットヘビー」型へと転換しつつある。決定的な検証の時が訪れるのは、ギガワット級のデータセンターが稼働を開始したときである。その段階になって初めて、実際のAI需要が、5社が積み上げてきた公表債務と簿外債務の総量に見合うものかどうかが明らかになる。
